2025/01/09
ガルバリウム鋼板の本質と塗装・施工のポイントガルバリウム鋼板との関わりは駆け出しサラリーマン研究者のときからですのでもう40年以上になります。亜鉛とアルミニウムの合金メッキなのですが比重差を考えるとほぼアルミニウムメッキですね。画期的な耐食性を示すメッキ鋼板で著名ですが、その原理を理解しているヒトはまだ少数派のようです。ChatGPTも知らないようですので私が解説させていただきます。亜鉛メッキ鋼板の防錆は犠牲陽極反応に拠っているのですが、下の表のように電位の比較では犠牲陽極は亜鉛よりもアルミニウムやマグネシウムのほうがこのましいことが分かります。マグネシウムは理論通りに犠牲陽極としても採用されていますがアルミニウムはそのままでは犠牲陽極にはならないのは、表面にすぐ絶縁性の酸化アルミニウム層が形成されるからです。人為的にする工程を「アルマイト加工」といいます。亜鉛と合金にすることによりその酸化アルミニウム層が形成されにくくなり、本来の犠牲陽極としての性能が発揮されているので単なる亜鉛メッキより段違いに耐食性があると考えるのがもっとも合理的だと考えられます。
ただ、だいたいのガルバリウム鋼板は表面にアクリルシリコンやポリエステル焼付け塗装が施されているので光触媒をガルバリウム鋼板に塗布するといっても現実には表層であるアクリルシリコンやポリエステルに塗布することになるので深く悩む必要はなく、たんに焼付け鋼板に光触媒を塗布すると考えて頂いて差し支えないです。むしろ光触媒よりも仕上げ施工や通常の塗装で細心の注意を要するのは「端部処理」です。むき出しの端部に水分が滞留すると亜鉛-鉄間よりももっと激烈な発錆反応が生じますので膨大な錆が発生します。むき出しの端部を絶対に作ってはいけません。端部は必ず分厚く塗装するか少なくともハゼ折り加工をする必要があります。
2024/12/22
ジンクリッチペイントの原理と注意点金属亜鉛の犠牲陽極作用を利用して鉄鋼の錆を防ぐ「ジンクリッチペイント」をプライマーとして採用されていることが最近多いのですが、注意点をいくつか指摘させていただきたいと思います。ジンクリッチペイントは金属亜鉛メッキの代用として使われるものですから、本来は亜鉛粉100%で構成されるべきなのですが、そうすると塗料になりませんので微量の樹脂が添加されています。下はもっとも有名はローバルという製品のSDS抜粋です。樹脂成分が企業秘密として記載されていませんが、揮発してなくなってしまう溶剤成分を引くと亜鉛粉70〜75%(重量日)に対して樹脂は0.5%程度になります。これは無理からぬことで、亜鉛の粒子間では防食効果をえるために金属導電性が確保されていなければなりません。そのためには亜鉛粒子間が接触していることが必要です。途切れていると間に電気を通さない樹脂が入って防食機能がまるでなくなってしまいます。比重1.2程度の樹脂がちょびっとある溶液に中に比重7.2の亜鉛粉が分散しているので、これはたいへん沈降しやすい塗料であることが分かります。使用前はもちろん、使用中にも耐えず攪拌し続けなければ本来の性能が得られません。常に乾燥塗膜が上の図のBになることが必要なのですね。
さらに絶対に必要な項目があります。
それは鋼材の間とも「完全な金属導電性」を確保しなければならないという点です、これを見落として施工されている場合が実に多いです。具体的には塗布する前の鋼材をピカピカの金属光沢が得られるほどの状態にしなければならないということで、2種ケレン以上になります。これだけでけっこう本番の塗装以上のコストがかかりそうですね。ジンクリッチペイントは上の2条件を厳密に守って施工しないと亜鉛メッキ並の防食効果が得られないです。
ところで当社では現在、バインダーにナフィオンを採用して防食性能を大幅に改善させるジンクリッチペイントを開発中ですので近々また新製品としてご報告できると思います。