2019年01月30日 [光触媒]
耐候性30年以上は可能か!?
「光触媒の耐候性は何年くらいあるの!?」とよく聞かれますが膜厚1ミクロン前後の薄膜はその下地の影響を強く受けますので即答しにくいのが本音です。塗装で30年の耐候性を保証できる仕様と材料の開発を某得意先から委託されましたが、現状のどんな促進耐候性試験でも確実にそんな長期の予見するのは不可能で、より精度の高い方法を駆使しなければなりません。ちょっと種明かししますと「すでに30年以上ノーメンテで経過している物件の材料と仕様の記録を紐解いて、それとの比較試験をする」のが正攻法なのですが、そんなデータを蓄積している律儀な塗料メーカーは殆どないでしょうね。
たとえば、この写真のビルは竣工から34年が経過していますがもちろんノーメンテで今でも立派に機能しています。塗料設計を新入社員だった私が担当したので組成や原料まで正確に覚えていたのは幸いでした。懐かしくもあり・・・これに採用された仕様と材料に促進試験の経過が勝ることで自信をもって「30年保証できる」といえるでしょう。
一般に30年保証といっても壁面、防水膜、金属部分では要求される性能が違ってきますのでこれにも注意が必要です。金属部分はとくに錆の発生を防がねばならず、材料とともに膜厚確保も重要な因子ですね。
そうそう、促進試験では判別しにくい点にも要注意です。一例を上げればHALS(ヒンダードアミン系光安定化剤)です。有機物化合物でまた融点がありますので長期間の屋外曝露では揮発して塗膜からなくなってしまう可能性があります。これを金科玉条のようにガーンと配合して耐候性をアップさせたつもりでも現実にはそう向上しないことが危惧されます。この現象は短時間の促進耐候性では判りませんし、ご注意ください。