2021年11月16日 [光触媒]
光触媒でのアンモニア分解はけっこう難しい
光触媒は伝導帯で還元反応、価電子帯で酸化反応が進行することがよく知られています。電位がバッチリ合うと通常では起こりえないような化学反応が生じることがあるのでそれを利用して意表をつくような反応を考案している研究機関がいくつかあります。たとえばアンモニア合成。
「臭くて余計なアンモニアを合成して何が楽しいのだ?」というあなたはアンモニアの重要性を知らない!!窒素肥料の大元、タンパク質の供給源であるこの物質の大量生産にFritz Harberが成功してから人類は飢餓から解放されたのです。・・・と言う話の延長で、光触媒でアンモニアを合成しようとする試みはけっこう長く続けられています。伝導帯がちょうど合っているので光触媒の表面で直接に窒素ガスを還元しようとする野心的なアイデアですね、うまく開発できることを願っています。ところが、困ったことにその逆のアンモニア分解は、酸化チタン系の光触媒では酸化還元電位が合わないので極めて進行しにくいとされています。アンモニアは代表的な有害ガスであるにも拘らず光触媒工業会のPIAJ基準にすらなっていません。直接光触媒の表面で分解させるのではなく光触媒で生じた活性酸素を用いて分解させるような裏技が必要なのですね。アンモニアは水に溶解しやすいので光触媒の表面に潤沢な水膜を形成させるとこの反応は進行します。まぁ、窒素と水素にまでは分解しませんがアンモニアが酸化されると(亜)硝酸になりますから臭気がなくなります。ビジュアル的にはフェノールフタレインの脱色で確認できますね。
ガスを用いる試験は仕掛けが大変なのと測定誤差が大きいのとで私は避け気味でして、最近は代わりに水溶液を使っています、まぁどちらも流体なので性質は同じですから。光触媒とバインダーの組合わせの妙により、従来より格段にアンモニアを分解させる能力の高まった、換言すれば排泄臭、介護臭、ペット臭の除去に威力を発揮する光触媒コーティング液が完成しました。写真の右側の液剤ですが、アンモニアで赤くなったフェノールフタレインは数分で脱色されています。
光触媒の応用分野がこれでさらに広がることを期待しています。
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